調子が悪いPowerBookG4を使っている私の同僚の話から始めよう。

不意にフリーズする。どうやら内蔵HDDにトラブルの兆候が出ている印象だ。パソコンにとってハードウエアの本質はHDDであり、パソコンの保守管理はHDDのデータを如何に守るかに尽きる。同僚には緊急のバックアップをお勧めした。ここで云うバックアップには2つの意味がある。ひとつはシステムのバックアップ、もう一つはデータのバックアップである。

ある時起動ドライブが吹っ飛んでどのような影響があるか考えると、パソコンが使えなくなることで仕事が滞る。単純にハードウエアが失われただけなら、アップルストアでクリックすれば数日後には新しいパソコンが手に入るだろう。職場の片隅に放置されているパソコンをとりあえず引っ張り出しても良い。梅田のヨドバシで買ってきたって良いし、家の近所のヤマダには中古のパソコンを取り扱う売り場がある。コストを負担さえ出来ればハードウエアのバックアップは簡単だ。

吹っ飛んだデータは戻ってこない。しかし、重要なものの多くは何らかの形で既にバックアップされていることが多い。また、後生大事に取ってある古いデータの多くは、諦めさえ付けば失われたところで実際の影響はさほどない。身も蓋もないが。古いものよりも、直近のデータの復旧度合いが問題になる。新しいほど、バックアップを取ってある可能性は低い。

しかし、仕事を遂行する上で重要なのはデータよりもむしろシステムそのものだ。ゼロからのシステムの復旧は大変な苦労を伴うだろう。アカウントの設定、様々なパスワードやidの設定、ソフトウエアのシリアル番号を探したり、アップデータのパッチを当てたり日本語変換の辞書、アドレス帳やメールクライアントのデータなど、完全な復旧は困難を極める。失われる前と同じ環境で仕事を続行しようと思ったら、単純なハードウエアの置き換えでは如何ともし難い。システムのバックアップが取ってあれば、リストアも可能だし、バックアップドライブを起動システムに指定して仕事を継続することが出来る。

同僚はいよいよ160GBの容量がある外付けHDD(2.5インチFirewire/USB2.0)を手に入れた。トラブルの話を聞いた時点で、私のアドバイスは

  1. 起動可能な外付けドライブを手に入れる
  2. ディスクユーティリティの「復旧」を使って、完全な内蔵HDDのコピーを用意する
  3. 内蔵HDDを放棄し、外付けドライブを起動ドライブに指定する
  4. 暇を見つけて対面修理に持っていって外付けのドライブと内蔵HDDを入れ替る
  5. オプションとして、OSXをアップグレード

と云ったもの。同僚のパワーブックG4は購入時のOSX10.3のままなので、10.4、若しくは10.5にアップグレードを勧めたが、とりあえず起動可能なシステムのコピーを手に入れて安心したらしい。もうそれ以上の面倒をする気がなくなったようだ。つまり、私の提案した対策の2番目で止めてしまった。しかし、それではバックアップを取った時点のコピーが出来ただけである。これを意味のあるものにするには、データや設定の定期的なシンクロ作業が必要だが、マニュアル操作で行うのは相当な困難が伴う。内蔵HDDの調子を考慮すると、近い将来、内蔵HDDを捨てる必要に迫られる可能性はかなり高いから、どうせならこの時点で捨ててしまった方がよいのではないか、と勧めては見たが、面倒くさいらしい。この手の行動は自己責任で屋ってもらわないとどうにもならない。上手く説得できなかった。結局、いつ飛ぶか分からない内蔵ドライブを使い続けている。

データのシンクロという意味で、LeopardのTimeMachineは大変よくできている。つまり、バックアップ先に指定した外付けドライブに、データを含めたシステムのバックアップを一定時間おきに取り続けてくれる。何かトラブルが発生した場合、過去に遡り任意の時刻の状態に戻すことが出来る。パソコンのバックアップの仕組みとして完璧と云って良いだろう。私は先日用意した外付けドライブをMacBookProのTimeMachineのバックアップ先に指定して使い始めて以来バックアップの煩わしさから完全に解放された気分である。この良さは使ってみて初めて分かる。かねてより悶々としていた自宅iMacのバックアップもTimeMachineに頼ることを決意した。iMacはここ数年の家族の記録であるデジカメの画像データがiPhotoで取り込んである。バックアップの必要性は切実に感じていたが、外付けドライブがもう少し安くなってから、というようなことを考えつつ、踏み切れずにいた。もう悩む必要はない。とにかく、バックアップだ。

IOデータのHDCN-U500をヤマダ電器で17000円足らず(プラスポイント500円分)で手に入れ、直ちにTimeMachineを稼働させた。最初のバックアップは大変時間が掛かる。およそ200GB分のに丸二日近く掛かったように思う。一旦バックアップが済むと、その後は余りTimeMachineの動作を意識させられることは無い。HDCN-Uはコンパクトなサイズが売りだが、驚くほど小さいわけではない。縦置き専用のデザインであるが、坐りが良く安定感がある。シンプルなデザインは好感が持てる。

TimeMachineはOSがバックアップをサポートしたという点で画期的だ。あとはセキュリティ対策がMacOSでサポートされたらMacOSXは完璧となる。ただし、使ってみて感じたTimeMachineの問題点を2つ指摘しておく。一つ目はセキュリティ上の問題点。バックアップドライブをパソコン本体と同等のものとして扱わねばならない。盗難に遇うと大変面倒なことになるから、職場のデスクの上に置きっぱなしというわけにはいかないだろう。もう一つは、省エネルギー上の問題。どうやら一時間おきに動いているらしい。この頃自宅のiMacの方は使わないときはスリープでいつも電源が入っているのだが、これは少し無駄ではないか。

職場の秘書が使っているDELLのノートも調子が悪い。もしかするとHDDのトラブルの兆候かも知れない。秘書にTimeMachineの話をすると、話が通じた。それは画期的だと痛く感心していた。

分類
Mac
URL
http://www.oyakonews.com/oyanews/homep/HP2008/HP080309.html