夏休みに入り、ピアノの発表会が近づいてきた。三姉妹それぞれ先生が違うので、発表会も三回ある。既に三女の発表会は終了した。次が次女、そして、最後が長女。歳の逆順で進んでいる。今気がついた。
長女と次女は体格がほぼ同じ。それで二人のために発表会用のワンピースを(一着)手に入れようと、妻がいくつか店を廻ったのだが、運悪く品切れ。あるいは、けばけばし過ぎる。別に主役ではないし、舞踏会というわけでもない。発表会の雰囲気も知っている。少しあらたまった程度でよい。何とかしたいと思った妻は、知人に借りることを考え、似たような境遇のご近所の人に相談し、「夏物は、もう時期的に手遅れだが、ネットで何とかなる」、という話を聞いてきた。
土曜の夜「どうにかしてよ。」という妻に、もう一度確認する。妻が知人から聞いた話は、ネットオークションなら、というような話しだった。確かにオークションなら手に入るかもしれないが、私はオークションに手を出したことはない。個人売買であるから、一週間後の発表会に間に合う保証はない、というと、オークションではなく通販だという。何だか、話が通じていない。妻、あるいはその知人は、オークションと通販をごちゃ混ぜにしているのかもしれない。それならば、と、グーグルでいくつかのキーワードを入力して、子供服の通販を検索してみることにした。
検索語に、「通信販売」を加えた途端に、検索件数が膨れ上がる。数十万の検索結果に、途方に暮れる妻に、とりあえずいくつか開いてみたら、と、アドバイス。開いては見たものの、所詮は素人が作ったページである。訳の分からないナビゲーション。どこをクリックしても何も起こらない、というページ。あぁ、これは途中まで作りかけて、やめちゃったのか、これから完成させるつもりか、どっちかだろうねぇ。いくつかのページで実際の商品を眺めることが出来たが、結局、これといったものが見つからず、想像していたよりも、はるかに手強いということに気がついた妻は、一時間ほどクリックしていたが結局諦めてしまった。「ネットの向こうに何でもある、というのは幻想だよ」と、私のアドバイスが、少々皮肉っぽく響いた。
私は、エアチケットを探すのに、十分にオーソライズされた大手企業のサイトを行き来するだけで、ウンザリする。ましてや、初めて見るほとんど素人のページで、探しているぴったりのものが見つけられるとしたら、それは涙ぐましい努力の果て、もしくは、奇跡的な幸運に恵まれたか、どちらかだ。
翌日曜日、子どもたちを私に任せて、梅田に出かけた妻は、阪神デパートであっさりと気に入ったワンピースを手に入れた。とりあえず、解決。