えほんの原作おやこニュース・ギャラリ:子供たちの作品紹介
有名な、「金の斧、銀の斧」のお話をベースに、トウサンが作り直したものです。後日、子供たちの絵がつくはずです。
1
あお木さんがはしっていました。
2
あたらしいしごとがきまったのです。
えきにむかってはしっていました。るり子さんが3時まで、おともだちのいえでまっています。いまからえきに行って、でんわをしてまちあわせたら、今日じゅうにあえるでしょう。
あおきさんははしりました。
3
えきまえの公園につきました。とけいをみると、あと15ふんあります。
「まにあいそうだな。」
あお木さんはほっとして、ひとやすみしました。あお木さんはあせをたくさんかいていました。
4
あお木さんは、ふんすいの前で立ちどまりました。ふん水から、なないろの水がふきだしていました。
突然、水が止まったので、あお木さんはおどろいてのぞきこみました。深いみどり色のすいめんの奥に、何かがあるように見えました。
5
あっ、と思ったとき、あお木さんのポケットから、さいふがすべりおちました。
まあるいさざなみをのこして、さいふはふんすいの池の底へしずんでいきました。
そして、みえなくなってしまいました。
6
こまりました。さいふがないと、きっぷをかえません。テレホンカードも入っていたのです。
そして、るり子さんのれんさく先のメモが、いっしょにしずんでしまいました。
こまりました。さて、どうしましょう。
7
あお木さんは、手を池の中に入れて、さいふをさぐってみましたが、池はふかくて手がとどかないようです。あおきさんは、いけにはいることにしました。
くつをぬいで、くつしたはまるめてくつの中に入れました。それから、ズボンのすそをめくり上げて、かたあしをそうっと池に入れようとした時です。
8
池の中におばあさんがひとり立っていました。おばあさんは、こん色のTシャツを着ていました。
そして、あお木さんの方をみていいました。
「どうしたのですか?。」
9
あお木さんはびっくりして、一歩さがりました。
「さいふをふん水におとしてこまっているのです。3時までに駅に行ってでんしゃにのりたいのです。」
10
「はい、そのさいふならしっています。これですね。」
おばあさんは、白いかわにしんじゅのついたおさいふをさしだしました。りっぱなおさいふでした。お金もたくさんはいっています。
「ありがとう。でも、ぼくのさいふは、そんなにりっぱなものではありません。」
11
おばあさんは、白いさいふをズボンの右のポケットにしまって、こんどは左のポケットから、黒い金のくさりがついたさいふをとりだしました。
「それもちがいます。ぼくのさいふは、青くてかさのもようがついてます。」
12
「ああ、これですか。」
おばあさんは、青いさいふをかばんからとり出して、あお木さんにわたしました。
「ありがとうございます。たすかりました。」
あおきさんは、おれいをいって、あたまを下げました。
13
「これからるり子さんにあうのですね。」
おばあさんがいったので、あお木さんはおどろきました。
「そうなんです。まだまにあいます。いつか、おれいにきます。」
おばあさんは、いつのまにか消えていました。
14
えきまではしりにはしって、あお木さんはまにあいました。るり子さんにでんわして、えきまえのうどん屋でまちあわせました。
15
「ほんとうかい?」
のはらさんが、おどろいたようにいいました。
「ほんとうさ。おまけにねぇ、おさいふに入っていた宝くじが当たったんだよ。4とうしょう、10まんえんとりょこうけん」
「ほんとうかい?」
16
のはらさんは、つぎの日、ひるすぎに、たからくじを10枚かって、おさいふにいれ、えきのそばの公園にいきました。ふしぎなふんすいは止まっています。
17
のはらさんは、お金をおさいふからポケットにうつしてから、おさいふをふんすいになげこみました。おさいふは、ふんすいの底にしずんで、みえなくなりました。
18
のはらさんは、ふんすいをのぞきこんでみましたが、だれもあらわれません。
しばらくまちましたが、なにもおこりません。
19
のはらさんは、ふんすいのまわりをうろうろしながらまちました。8時半までまちましたが、おなかがすいてきたので、あきらめてかえることにしました。
20
のはらさんは、家の前のカレー屋「ルゥ」にはいって、だいすきなナスカレーをたのみました。そういえば、サービスカードのスタンプが、あとひとつで25こになります。とうとう、ルゥスペシャルカレーをタダで食べられるのです。
21
三つめのナスを口に入れているときに、のはらさんはふとおもいだしました。サービスカードはおさいふといっしょにふんすいの底にしずんでしまったのです。
このよのなかには、色々な幸運が転がっているらしい。しかし、そういった幸運は、子供たちが期待するような大きなものではなく、大抵は些細なもの。運命が変わってしまうような大きな幸運は、むしろ、人々の生活や生き方を変えてしまい、結局は不幸をもたらすのではないか。日々を一生懸命生きている人々に、いくつかの小さな幸運が積み重なっていく。
のはらさんがなくしてしまったサービスカードは、かれが一年がかりで貯めたもので、彼の落胆は想像するに余りある。一見すると詰まらないことでも、この話の結末は、不誠実なひとに起こりうるかなり残酷な不幸を描いている。
あお木さん、のはらさん、という2人のキャラクターは、ヨウカラが考えた。ストーリーを作る上で、細部はヨウカラがアイディアを出した。猪名川の河原で、2人で相談しながら書き進めた。これから絵を付けていく上で、さらに推敲が進むと思う。