ダイアリ:いっしゅんの一コマ@おやこニュース
そもそも、どうしてこの時期にアメリカ旅行を計画したのか。
4人の子どもたちは、それぞれに生まれた場所が違っています。長女はロサンジェルス近郊の町の病院で生まれました。次女は里帰り出産でした。三女は埼玉県の病院で、長男は今住んでいるすぐ近くの病院で生まれました。姉弟の中で長女だけが自分の生まれた町を知りませんでした。私たちは親として、一度長女に生まれた場所を見せたかったのです。彼女は15年前にその場所で生まれて、1年半ほどそこに住んでいました。よちよち歩きの頃に、その街角を歩いていたのです。彼女は自分のアルバムや、ビデオのなかでそういう景色を見て、何となくイメージを膨らませていたようでした。勿論、その時のことを実際の記憶としては何も覚えていないようです。
計画は立てましたが、例の同時多発テロがあったりで、延び延びとなりました。子どもたちが中学、そして高校に進み出すと、家族が揃って行動できるタイミングというのはごく限られてきます。そしていろいろなことを勘案して、今年が最後のチャンスというのが結論でした。何とかそのための資金も貯まり、いよいよ決行すると云うタイミングで新型インフルエンザの流行がありました。やきもきしましたが、私たちはイエローストーン経由で何とかロサンジェルスにたどり着きました。波子が生まれた時に住んでいたアパートから歩いて数分の位置にあるモーテルに宿を取り、朝の散歩で生まれ故郷の町並みを眺めました。
ナミにとって、想像の中の景色が目の前に現れて、自分は15歳になっている。いろいろなものが普段と違うけれども、生まれた時はそれが当たり前だった筈、と言う奇妙な感覚。タイムスリップしたような、きっと不思議な気分だったのだろうと想像します。私たちも、こんなに長い時間が経っているとは思っていませんでしたし、それ以上にそこら辺の景色が、余り変わっていなかったのに驚きました。本当の生まれた場所、病院の看板の前、そして、家の写真立てに、まだ生まれる前の妊婦姿のカアサンの写真の背景になっていたサンタモニカのビーチで撮った写真の一コマですが、生まれ故郷を見せると言うことに拘り続けたカアサンのお陰で、私たちはここにたどり着き、何かを遣り遂げたような、責任を果たしたような気持ちになりました。